しらふ倶楽部

昭和の漫画(劇画)を遠望する

つげ義春大全 別巻1

つげ義春大全 別巻1 (随筆)夢日記 僕の漫画作法』(講談社

発行は2021年2月。帯裏に「つげ義春大全 堂々完結」と書かれる。
大全のうち初期作品のカラーのものを何冊か揃えていたが、そろそろ完結したのではと思って調べてみると、とっくに完結していたわけだ。

内容については、エッセイなどをまとめた本であり、
これまでにない詳細な「年譜」があり、『COMICばく』の毎回のあとがきなどもまとめて読める、そのほか単行本未収録のものも多いのではなかろうか。

『ばく』7号のから文には、
「今月の『ばく』の発売日が四十八歳の誕生日。」
と書かれる。ばく7の発行日は1985年12月、発売日は10月30日だったことがわかる。その日は戸籍上の誕生日にすぎないらしいが、この記事の日付は1日違いの10月31日になった。つげ氏は今年、85歳。


末永史作品集(2007)の帯コメントの文も収録され、注目していたので雑誌から切取って保存していたとのこと。雑誌とは『ヤングコミック』などだろう。私も切り取って百数十ページを一冊に閉じておいたものがあったのだが、どこへ行ったか…?。

エッセイの「上州湯宿温泉の旅」と「湯宿温泉のことなど」とを読み比べると、湯宿温泉を知るきっかけについての語り方の違いが面白い。前者はユーモアが前面に出ている。後者は若く熱心なファンへの直接的なメッセージでもあり作家としての風格を感じさせる。

 

別巻の一冊としては、他に『つげ義春対談集』がまとめられることを期待していたが、今回はないようである。「年譜」の中の「インタビュー・その他記事」という項目に、多くの対談記事のリストが掲載されている。ちくま文庫の『つげ義春1968』に収録の座談会「マンガブームとは無縁か」は、1970年6月のものだが、「年譜」のリストには見つからない。漏れているかもしれない(82年ユリイカの「テッテ的年譜」には載る)。

この『大全』の直前ごろに出た本に、岡野弘彦編『精選 折口信夫』という全6巻の選集がある。最終の1巻は「アルバム」と題され、1冊まるごと写真集である。著名な学者でも写真集があるのだから、人気漫画家の全集に『写真集』を入れてもおかしくはないと思う。

それにしても講談社のこの本は、重い。なぜなのか、かなり厚い紙を使っている。ゆうメールが(2018年に)厚さ3cm以下とされて以後は、こんな厚い本はないと思っていたのに。