しらふ倶楽部

昭和の漫画(劇画)を遠望する

手塚治虫の代表的作品ベスト15

手塚治虫について、
代表的な作品を10~20程度を選んでみるのも一興かと思い(15作品を選んでみた)、作品を思い出してみると、昭和20年代の単行本では『化石島』と『罪と罰』が良いと思う。どちらも20年代後半(1950年代前半)の作品で、手塚人気は20年代前半からすごかったらしいが、今読んで面白いのはこの2つだろう。『化石島』は新書判ブームのときに復刻され、『罪と罰』は同じころCOMの付録として復刻された。単行本時代の作が新書判で復刻されたのは『化石島』だけだと思う。

1950年代後半の雑誌連載物としては、『ロック冒険記』と『アトム大使』で、どちらも手塚らしいスケールの大きいSF物で、異人類・異文明との交流やペシミズムが基底に流れる。『アトム大使』につづく『鉄腕アトム』では特に「海蛇島」「赤いネコ」などが印象に残る。

ここで手塚プロの「作品年表」をみてみた。
https://tezukaosamu.net/jp/manga/chronology.html

1950年代後半の手塚は、低調だったと思う。アトムはマンネリになり、「ケン1探偵長」や「僕の孫悟空」は、(70年頃読んだが)退屈だった。探偵物としてはつげ義春の『四つの犯罪』のほうがずっと面白い。ほかに少女物が多いのもこの時代である。
時代物、探偵物、少女物となれば、この時代が全盛期だった貸本漫画と同じ傾向ということになる。少年雑誌でいえば『赤胴鈴之助』『ビリーパック』の時代。低調の理由はやはり映画の影響によるものなのだろう。この時代の手塚を悩ませたのは、映画人気だったことになる。この時代の作品から選ぶとすれば『ライオンブック』の短編くらいだろう。60年安保世代は、10代後半で前述の作品に触れて、手塚に失望したことだろうと思う。

60年代前半は少年週刊誌が登場し、『0マン』『キャプテンKen』や『ビッグX』などのSF物で手塚は復活する。『0マン』は異文明物、『キャプテンKen』は西部劇スタイル、『ビッグX』はナチスもどきの秘密結社アクション物を取り入れ、映画の影響がありそうだが、SFとしてもまあまあだったと思う。
そして63年からはテレビアニメ『鉄腕アトム』が大成功。

60年代後半は、SF物の『ワンダースリー』のほか、『バンパイヤ』などSF以外の異文明物もある。67年にはCOMを創刊し、『火の鳥』の開始。成人青年向けのSF『人間ども集まれ』『地球を呑む』『空気の底』などを多作する。
また新書判ブームによって多くの旧作が復刻されるが、新書判の直前にはB5判のカッパコミックスのような時代もあった。「アトムの子世代」(シラケ世代)としては、中学生時代を中心とした年齢にあたり、前述の全ての作品はこの時代に苦労なく入手して読んだため、手塚に圧倒されることになる(ガロ系の作品にも徐々に触れることになるが)。

70年代は、歴史物なども増えてゆくが、リストアップするのに飽きてしまったので、おしまいにする。『サンダーマスク』が不思議な作品だったが、尻切れトンボで終っている。

『ワンダースリー』については、3人の死後の世界が過去の世界につながるような話について、あとで書いてみよう。

ワンダースリー