しらふ倶楽部

昭和の漫画(劇画)を遠望する

冊子印刷での画像の解像度について

近年、安価な冊子印刷が普及している。冊子には画像を多く使いたいが、画像の解像度はどの程度が適切かという問題である。

冊子作成の流れは、ワープロだけでも十分であり、ワープロ文書に画像を挿入しページ番号なども整えて、文書保存はPDF形式で保存し、そのPDFファイルを印刷ショップに送るだけである。
ワープロでは、編集画面での画像表示は小さくても、実際の画像データは保存文書内でしっかりオリジナルサイズのままなので、巨大画像を多く使えば、ワープロの操作が重くなり、ワープロが停止してエラーになることもある。可能な限りオリジナル画像を小さくすることで、編集作業を円滑にすることができるはずである。

一般に、印刷用画像の解像度は、300dpiが標準であるといわれる。
dpiとは、dots per inch、画像の長さ1インチ当りのドット(ピクセル)の数のことである。300dpiは、1mm当り約12ドットになる。
印刷文字でいうと、ワープロの標準文字サイズの10.5ポイントは、およそ3.75mmなので、300dpiでは、12×3.75 で45ドットになる。Windows95のころ、専用プリンタは24ドット文字から48ドット文字にグレードアップしたが、その解像度で十分ということになる。それ以後のプリンタは、解像度よりもカラー写真の色を重視してきたと思う。

300dpiで印刷文字も十分となると、挿入画像はどうであろうか。
A6判文庫本サイズの横幅は105mmだが、余白を除いた印刷幅は、漫画本でも88mmなので、300dpiなら、12×88で、1056ピクセルになる。85mmなら1020ピクセル。これはちょうどXGAサイズと呼ばれる画面サイズ(1024ピクセル)にかなり近い。デジカメでは80万画素がこの大きさである。
A4判ならその2倍サイズということになる。A5なら漫画『つげ義春大全』が印刷幅125mmなのでちょうど1500ピクセル。漫画本でなければ印刷面はより小さいのが普通である。

300dpiの画像とは、その横幅が文庫本なら1024ピクセルA5なら1500ピクセルという憶えやすい数字になる。

ワープロの編集画面の1ページの表示幅が400~500ピクセル程度だとしても、画像データをそこまで小さくしてはいけない)

投稿用漫画原稿は、内枠幅180mm(B5印刷時の120%、用紙サイズはほぼA4)なので、スキャナ解像度300dpiなら2160ピクセルの画像になる。200dpiなら1440ピクセルで、A5用1500ピクセルに近い。A5に縮小して印刷するなら、スキャナも縮小に合わせて200dpiで十分ということになる。
マチュアの漫画作品ということになると、細かい線画に自信がある人でなければ、もう少しdpiを落としても良いだろう。

さて、もう一つの問題は、写真画像の明暗調整の問題である。安価な印刷では見本印刷の仕上りを見てからの発注ができないので、手探りでの調整にならざるをえない。
古書店の在庫目録に掲載の印刷写真を見ると、非常に暗い画像ばかりになっていて、写真はほんの参考に載せただけということなのだろうが、その他でも暗過ぎる写真画像を載せた印刷物はよく見かける。

暗すぎる原因を想像してみると、編集者のPCのディスプレイ表示が、明るめの設定であったり、コントラストを強調した設定になっていると、実際の画像データが暗過ぎるものであることに気づかないこともあろう。
印刷ショップでも、漫画のベタがかすれずにくっきり出ますというのが宣伝になるので、一律に暗めの印刷にしていることもあるかもしれない(最近は黒ベタがかすれている印刷物はあまり見かけない)。
その原因は不明だが、ともかく写真画像はガンマ値を上げるなど明るめに調整したほうが良いようではある。