しらふ倶楽部

昭和の漫画(劇画)を遠望する

アトム今昔物語 復刻版

『アトム今昔物語 復刻版』 メディアファクトリー 2004

アトム今昔物語は、1967年1月から69年2月まで、サンケイ新聞に連載されたものだが、単行本化のときに100ページもカットされたとのことで(全集版も同じ)、そのノーカット版がこの「復刻版」ということになる。2000年代に出版されたものだが、取り寄せて読んでみた。
新聞連載当時は、中学生として毎日読んでいた記憶がある。

物語は、2017年に太陽に突入(?)したかと思われたアトムが、イナゴ星人に救出され、その星のスカラという女性とともに地球へ戻るとき、50年前の1967年へタイムスリップしてしまう。
1967年とは連載開始の年である。アトムはその時代の四畳半のアパートに暮らしたり、当時の日本の生活が懐かしく思い出される。また、若き日のお茶の水博士や、ヒゲオヤジ探偵(の親)も登場し、そのへんは、わくわくする内容だった。

アトムは、40年前の時代に戻ってしまったので、エネルギーを補給できない。あと何日まで持つのだろうかと、心配しながら連載を読んでいた記憶がある。節約して使って半年とも書かれていた。
ビルの崩壊事故にまきこまれた人を助けるべきか、アトムは躊躇する場面がある。もちろん自分のエネルギー保持のことを優先するアトムではない。

けれども、アトムは、建物から外へ出るたびに、壁や窓を破壊する。エネルギーのムダ使いをしているように思えた。それがアトムらしくて、かっこいいのだろうか。そんなことが繰り返されるうちに、だんだん面白くなくなっていったのだった。
エネルギーを節約する工夫の話などが、いろいろと出てくるかと期待したが、それもなかった。節約のことなので、こじきのシンちゃんに相談すれるのがいちばん良いと思った。
案の定、大長編になるかと思われたこの物語は、だんだん面白くなくなっていった。

アトム今昔物語

ところで、昭和30年以前の
アトム連載の初期のころのものを見ると、アトムは小学生の服装で学校に通い、子供たちどうしで一緒にいる場面が多い。空を飛んだり戦闘場面になると、アトムは服を脱ぎ捨て、パンツ一つの裸になる。窓や壁を破るときも裸である。
「海蛇島の巻」をはじめ、面白い作品ででは、アトムは裸の場面が非常に少ないことがわかる。
アトム今昔物語でも、退屈な場面が長く続くときは、アトムは常に裸なのだった。

ウルトラマンなどは、3分間だけしかウルトラマンでいられないのだが、
アトムは制限時間なしで、まじめに働きすぎなのかもしれない。
やはり昭和30年代は、高度経済成長の時代だった。